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伊豆大島に夢中になった理由

病んだ私「あした、大島へ行こう」

私が初めて伊豆大島を訪れたのは、2012年の11月のことでした。


Web制作会社のディレクターとして働きながら、お休みの日はヒーリングセッションを提供するという、2足の草鞋を続けて2年ほど経った時期です。


その年の夏頃から、会社全体で仕事のトラブルが立て続けに起こるようになります。
人間関係も最悪で、社内の空気はいつもピリピリしていました。


私は当時、某有名企業の案件を担当していたのですが、気づいたら1人ですべての責任を負わねばならない状況になっていたうえに、ちょっとしたいじめにもあっていて、プレッシャーで日に日にやつれていきました。


食欲もなくなり、悪夢ばかり見て、自分のうなされる声で目を覚ますこともありました。


それでもなんとか気持ちを奮い立たせてがんばってきましたが、あり得ない重大なミスを連発するようになってようやく、「これはおかしいな」「普通じゃないな」と自分の状態に気づきます。


すぐに心療内科で診断書を作成していただき、翌日から休職しました。


ホッとしたのもつかの間、今度は罪悪感と不安でいっぱいで、気持ちはどんどん落ち込んでいきました。


「このままでは無理」と思った私は、大好きな場所、ハワイ島へ行ってリフレッシュしてこよう!と決めました。


ですが諸事情もあり、すぐに家を空けられるとしたら3~4日ほど。
残念ながらその日数では、ハワイ島に行ってもゆっくりは過ごせません。

そこで浮かんだアイデアは
「ハワイ島の姉妹島だという伊豆大島なら、エネルギーが似てるかも!」

数年前に読んだ雑誌『ecocolo』を思い出し、本棚から引っ張り出してきました。

『ecocolo』
特集:「あした、大島へ行こう」(2007年)


私は20代の頃、よく1人旅をしていたのですが、行先はハワイ島、カウアイ島、マウイ島、オアフ島、ランカウイ島、マクタン島、屋久島。気づけばぜんぶ、島でした。

クレタ島、ミコノス島、バリ島、三宅島、八丈島、小豆島、与論島、水納島にも行きました。

それでも伊豆大島は、旅の候補に挙がったことはありませんでした。
どうせ島に行くなら海外リゾートや、南方がいいなと思っていたから。

なので、このような事態にならなければ、大島を訪れることはなかったかもしれません。

さて、少々病んでしまった私は「あした、大島へ行こう」と、すぐさま『ecocolo』で紹介されていたゲストハウス「OASIS」に予約を入れて、3泊4日の一人旅に出たのでした。

伊豆大島に夢中になった理由

観光シーズンも終わって、静かな晩秋の伊豆大島に到着。
真っ青な空の大きさと近さに圧倒されました。

ゲストハウス「OASIS」のおかあさんは、『ecocolo』で見たとおりの優しくてあったかな方で、私がなぜ一人で島に来たかに耳を傾けてくださいました。

「大変だったね。ゆっくりして行って」の一言が沁みて、それだけで癒されたのを覚えています。

その頃ペーパードライバーだった私は、バスで島を回ったり、徒歩で行ける距離の場所を探索するつもりでいましたが、なんと!今度は「OASIS」のおとうさんが「車で島を一周して案内しようか?」とお声をかけてくださいました。

「大島の人ってなんて優しいの……」

最初に出会った島民が「OASIS」のおかあさんとおとうさんだったことも、大島の印象を決定づける大切な必然でした。

お言葉に甘えて、おとうさんとドライブへ。

島一番の都会、元町から大島一周道路を走って南部へ向かいます。

緑豊かな森をくぐり抜けて、迫力のある地層切断面(バームクーヘン)を過ぎ、波浮港へ。鵜飼商店のコロッケを食べた後は裏砂漠へ。
(今にして思うと、本当に島の魅力をダイジェストに見せてもらったドライブでした)

私が伊豆大島に夢中なった一番の理由は、この裏砂漠での体験です。

裏砂漠。国土地理院が発行する地図に唯一「砂漠」と表記された場所なのだそうです。

裏砂漠は、当然ながら一面が砂で、黒くてゴツゴツした砂で ─ 別の星にいるみたいな場所でした。
遠くに見える地平線の先、真っ青な空の真ん中に地球が浮かんでいるような気がしました。

ずんずん進むおとうさんの後を追って、砂漠の真ん中へ。

「ここで寝そべると、気持ちがいいよ~」とおとうさんが言うように、大の字になって仰向けに横たわって、目を閉じました。

背中から、疲れとかストレスとか悲しみとか怒りとか迷いとか、なんやかんやがすすーっと流れ去って、大地に還っていくのがわかりました。

あぁ、気持がいい…

どんどん背中が軽くなっていく。力が抜けてゆく。
そこに新しいエネルギーが入ってくる自然の循環。何をせずとも生かされている安心感。

長い間、雲一つない空を見上げていました。

私たち以外は誰もいない星にいるみたい。風の吹く音だけが聴こえる。

気がついたら、涙が流れていました。

「すごく浄化されるでしょう?」

おとうさんは何も聞かず、ただそう声をかけてくれました。

帰りの車中、すっかり元気を取り戻していた私。
「大島に移住してくれば?家を建ててあげるよ」「いいですね~それ!」なんて軽く話していたことが、8年後に現実になっているなんて、その時は知る由もありませんでした。

大島から戻った私は、会社を辞めました。

本当にやりたいことだけで生計を立てていこう、と覚悟が決まったからです。
エネルギーが充電されたのでしょう、自分にはそれができる!と迷いや不安はありませんでした。

再び伊豆大島を訪れるのはそれから4年後でした。

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